愛があれば、それで
「ねぇ、桜木さん……助けて」



あたしが電話をかけたのは、お昼に一緒にいた桜木さん。

慌てた声で「どうした!?」って焦ってる。



「もう、限界……」



そう告げると「もう今日は直帰だから」と家に飛んできてくれた。

一瞬、透くん以外の男の人とこの家で二人きりになることを、うーんと思ったけど何も無いし。
あっちは、もっと酷いことをしてると思って、受け入れることにした。



「大丈夫?結花ちゃん」



何度も襲ってくる吐き気に心配そうにあたしの顔を覗く桜木さん。



「透くん、あたしたちが寝ているベッドでもしてたみたいで。袋が落ちてたよ、ほら。それを知った途端に吐き気が止まらなくて」


「そっか」



何度も押し寄せる吐き気にあたしの背中を優しくさすってくれる。



「俺、結花ちゃんのこと好きだよ」


「え……?」


「結花ちゃんも俺としちゃえばいいのに……なーんてね」



冗談ぽく言ってニッコリ笑う。

好かれて嬉しい気持ちはある。
でも、あたしにはそんなことはできない。


「結花ちゃんがそーいうこと絶対できないの分かってるから。俺が透に話すよ」


「え?」


「こんなに結花ちゃんが苦しんでること、ちゃんと 言わないと。うちに秘めてるなんてだめだよ」


「うん……」



本気じゃなければ、バレたら透くんはやめてくれる。
もしも、本気だったら。
もう、あたしとは一緒にいれないかもしれない。

そう思うと、まだこのままでいい気がしてしまうから、ここまできてもなお好きなことに自分がバカバカしく思うけど、それがあたしだから。

< 30 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop