愛があれば、それで
「悔しい!」



あたしは悔しくて、悔しくて、仕方なかった。
本田さんを結花の元に返したくなんてなかった。

だから、先回りしようと思った。
ばれてるなら、もう繕わなくたっていい。
もう、友情なんていらない。

たぶん、本田さんの車できてるだろうから。
一度、桜木さんを送っていくだろう。
だから、いまからタクシーで行けば間に合うはずだ。

ふたりの愛の巣に乗り込んでやる。
絶対にふたりだけが幸せになるなんて許さない。
あたしが幸せになれないなら、ふたりにも幸せではいてもらえない。



「許せない。許せない。許せない」



あたしの脳裏にチラつくのは、たまたまこの前みたベビーカーを押して歩く本田さんとその横にいる結花。

なんとも幸せな家族を描いたようで。
本当はその旦那はあたしと不倫していますよってその場で叫んでやりたかった。

それも、あたしはその妻の友達ですってね。
なんとも修羅場でしょ。

そんなのを想像するだけで、ワクワクが止まらない。

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