愛があれば、それで
──ピンポーン



1階のエントランスのオートロックでふたりの愛の巣の部屋番号を押す。

ここに来るのは二度め。
2ヶ月と少し前。
はじめて、写真で本田さんを見た日。

あのときは、写真のなかだけでもう会うことはないと思っていて。
いくら、あたしが彼のことを思っても、結花の旦那で。
あたしには出会うことのない人だと諦めていた。

でも、運命の出会いはすぐそこにあったのだ。
これは、運命。
運命は誰にも壊すことなんかできないはずだ。



「はい」



オートロックの機械のスピーカーから、結花の声がする。



「あたしよ。結花」


「……菜美?」


「そうよ。話があってきたの。大事なね」


「わかった。今開ける」



彼女はいま、最愛の人がまたあたしを好きになったという思いでいっぱいだろう。
どうやって身を引こうか考えているところだろう。



「もう知ってるのに素直に開けてくれるのね」


ついた玄関。
迎えてくれた結花ににこっと笑う。

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