愛があれば、それで
「な、何言ってんだ!俺はお前と別れるつもりなんかない!」



立ち上がったあたしの両肩を掴む。



「だから、触らないでって……「嫌だ!触る!」



あたしの言葉を遮って、風音ごとあたしを抱きしめる。



「関さんの言うことは信じないで欲しい」


「え?」


「俺は、関さんのこと好きになんかなってない」



ポケットからスマホをだして、何やら操作をする透くん。



「あ、桜木?ちょっと家きてくれないか?予想外のことが起こった」



耳にあてたかと思えば、どうやら桜木さんと話してるらしい。

予想外のこととは、菜美が家にきたことだろうか。



「ねぇ、いつまでそこにいるわけ?早く大事な話し合いしようよ。ね、本田さん」



トイレに入ってきた菜美が透くんの腕に触れる。

その姿を見た瞬間、胸にいままで感じたことのない軋みがはしる。



「俺にふれないでくれ。関さん」



そんな菜美の手をサッと振り払う。



「言ったよね。これ以上結花を傷つけたら許さないって」

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