愛があれば、それで
「なんて言っても、一番傷つけてるのは本田さんだと思うけど?」


「それは、わかってる。これから生涯かけて償っていくつもりだから」



生涯かけて。
その言葉に許しそうになってしまうけど、ただ付き合っていただけのときといまは違う。



──ピンポーン



インターフォンがなって、透くんが「上がってきて」とオートロックを解除する。

どうやら、桜木くんが来たようだ。



「ちっ、また桜木さん……」



菜美が舌打ちをするのが聞こえる。

この菜美はあたしがずっと知っている菜美とは違う。
こんな表情する子ではなかった。



「菜美は知ってたよね?あたしの旦那がこの人だって」



そんな菜美に近づいて、あたしは問いかけた。



「ええ、知ってて近づいたの」


「は?」



これには透くんも驚いたようで、目を丸くしてる。



「菜美が着任する前の週、うちに来たの。その写真みて、かっこいいねって言ってたよね。その時からそのつもりだったの?」


「まさか。その時はこれから行くとこが2人がいた会社だなんて知らなかったよ」



最初から仕組まれていたことではなかったから、まだよかったのかもしれない。

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