愛があれば、それで
「顔も見たくない……か」



いままでとは違うことはわかっている。
いままでは付き合ってるだけだった。
けど、いま俺たちは夫婦で親だ。

そして、今回の相手も悪かった。
まさかの結花の友達だった。
そして、ふたりのこの家で……。

悔やんでも悔やみきれない。
もう嫌だと言われても仕方ない。

でも、それでも俺は結花を諦められない。

今まで俺が、女の子の誘いを断れなかった理由。
そして、もうそれは大丈夫だということも。
結花に伝えたい。

それから、考えてもらいたい。

虫のいい話かもしれない。
でも、俺は結花以外好きにはなれないし、これを最後の愛にしたい。

願うなら、死が2人を分かつまで。
一緒にいたいと願っている。



「結花、そのままでいいから聞いてほしい」



寝室のドア越しに、結花に語りかける。
顔を見たくないと言った結花の言葉を無視しないで、話すにはこれが一番だと思ったから。

< 56 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop