愛があれば、それで
「それから、俺は断ろうとするとその子の顔が浮かぶようになった。言葉が続かないんだよ……俺にとって、その自殺はトラウマをうえつけていったんだよ」



こんなこと話したって言い訳だと思われても仕方ない。
現に、いつも結花のこと傷つけていたのは、他でもないこの俺なんだから。



「結花にであって、久しぶりに人を好きだと思った。すごい好きだって。付き合うつもりなんてなかったのに、結花とは絶対に付き合いたかった」



今だって覚えてる。
結花にはじめて会った日のこと。
ハッキリとすぐにわかった。
この子のことが好きだって。

それから必死に話しかけて、毎日アピールして。
そして、好きな子が自分の彼女になったことがこんなに嬉しいことだなんて忘れてた。
そんな気持ちを結花は思い出させてくれた。



「結花のことはすごい好きで、傷つけたくなんてないのに、どうしてもトラウマは消えなくて……結婚してからまで、本当にごめん。でも、今日桜木が飛び降りたこを連れてきてくれて、あれは凄い風で吹き飛ばされただけで、自殺じゃないって教えてくれて……すうっと俺のなかにあるなにかが消え去ったんだ」



もう、過ちは繰り返さない。
結花のこと、もう裏切らないって自信がある。

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