愛があれば、それで
たしかに結花と付き合ってる2年間。
俺はいい彼氏では決してなかった。



「お前が結婚して、まぁ誘ってくる女の子もいねーか」


「そりゃな」


「でも、産休代理のこ、いつもお前のこと見てるから気をつけろよ」


「マジか……」



俺はちらっと、彼女のいるデスクに目をやる。

俺に好意的だなとはおもっていた。
でも、俺が結婚してることももうすぐ子供がいることも他から聞いて知ってるだろうしと、特に気には留めてなかった。



「お前、誘われたら断れないんだから自分で回避しろ」



ポンっと頭を叩いて、俺の隣の席から立ち上がる。



「あ、あぁ……」



俺の額には冷や汗が流れる。
絶対に誘われたくない。
絶対にもう結花を傷つけたくなんてない。
結花とは絶対に離れたくない。

その想いは強いのに、誘われることが怖くて仕方なかった。



「いつになったらなくなるかね。そのトラウマ」


「そんなの俺が知りてーよ」

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