愛があれば、それで
高校時代から俺のことを知ってる桜木。
こいつしか知らない、俺のトラウマ。
結花にも話してない。

人よりすこし優れた容姿に産まれたという自覚はあった。
昔から、告白はたくさんされてきた。
ある日、告白してきた女の子に「彼女がいるからごめん」と謝ってことわった。

その子が、放課後。
ビルの屋上から飛び降りたんだ。
幸い命は助かったみたいだけど、俺は自分のせいだと後悔した。

俺があそこで「彼女がいてもいいなら」とOKしていればよかったんだという後悔に至った。

それから、特定の彼女を作ることをやめた。
そして、どんな誘いも断ることをやめた。
彼女がいない俺には気にするものがなにもなかった。

でも、社会人三年目。
結花が入社してきて、俺の世界は変わった。
はじめてだった。
こんなに誰かのことを好きだと思うのは。
こんなに誰かと付き合いたいと思うのは。

だから、もう誘いを断らない俺はやめて、結花と付き合っていくと決めた。

……はずだった。

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