王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
心から残念がるメリーアンに、アーノルドは眉を下げて「緊急を要するものでね」と微笑む。


「きみは心ゆくまでゆっくりしていくといい」


一礼をするとアーノルドはユアンと共に茶会を後にした。

途端、メリーアンは気落ちしたような表情を浮かべる。余程アーノルドと一緒にいたかったらしい。良くも悪くもとても分かりやすい人物だとオリヴィアは思った。


「メリーアン王女はアーノルドの婚約のこと、驚いたかしら?」


ディアナの気遣う言葉に、素直にメリーアンは頷いた。


「ええ、とても、とても、驚きましたわ」


それからメリーアンは思いの丈を吐露していく。


「私の国とアーノルド殿下のこの国とは深い関わりがありますもの。きっと私がアーノルド殿下と結ばれるものと思ってきましたから」


アーノルドと結ばれることを信じて疑わなかったメリーアンの失意は如何ほどのものだろうか。それはこの世の終わりとも同じなのかも知れない。それほどにメリーアンの表情は暗いものになっていた。

それはメリーアン自身も気付いているのだろう、ハッと気付いたように明るい表情を浮かべて「けれど、本当に喜ばしいことですわね」とディアナに微笑みかける。

それからオリヴィアの方を見て「おめでとうございます」と祝福の言葉を告げた。


「あ、ありがとうござい……」


しかしオリヴィアが言い切る前に、オリヴィアの言葉に被せるようにしてメリーアンは言った。


「貴女のお家、ダルトン伯爵家とその御領地については私も存じておりますわ。我が国とこの国の国境の地で、非常に貧しい土地であったと」
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