王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
行きたい
そうして茶会は不穏な空気の中お開きとなった。

帰り際、ディアナからは「気にしないでね」と声を掛けられたが、気にとめないわけにはいかなかった。

メリーアンは盲目的にアーノルドを慕っている女性だ。きっと自分のことを好きになって欲しくて、選んでほしくて、そのためにはどんな手段を使っても周りの者を蹴落とす、そんな人物だ。

けれどあんな風に真っ向から敵意を向けられるとはオリヴィアは少しも思わなかった。

オリヴィアはメリーアンのことを好いているわけではないが、あんな風に真っ向から存在を否定するような言葉を掛けられたら流石に落ち込む。

王城の回廊を一人で歩きながら溜め息を吐き出すと、「やけに疲れた顔だね」と声を掛けられた。


「茶会は上手くいったの?」

「私のこの表情からそう読み取るとは相当お目が悪いようですね、アーノルド様。お医者様にかかってはいかがですか」


回廊の窓枠に腰をかけたアーノルドは「相変わらず厳しいね、オリヴィアは」となぜか笑った。

回廊にいるからか、アーノルドは王太子の顔をしていた。それが余計にオリヴィアを腹立たせた。


「姉上がいるから、女王も多少は手加減してくれるかと期待したんだけどな」

「ディアナ殿下の御前で、はっきりと宣言されましたよ。アーノルド様に仇成すものは駆除すると」

その対象がオリヴィアだとは言わなくともアーノルドには伝わったらしい。


「ふうん、それは過激だね」

「過激どころの話ではありませんよ。完全に私は敵視されているんですよ!」

「とは言え、命までは奪わないよ。まず王女にそんな勇気はない」

「そんなことありません。あの方は心からアーノルド様のことを慕っていらっしゃいます」


オリヴィアは確信していた。

アーノルドのことが好きだと言ったあの時のメリーアンの目は、アーノルドに仇成すものは許さないと言ったあの時の目は、その意志の強さを物語っていた。


「あの方は、本気です」

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