王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
帰りたい
「最悪!」
部屋に戻ってきたオリヴィアの第一声はそれだった。
何があったのかと心配そうな表情を浮かべるメイに、オリヴィアはひとつ溜め息を吐き出した。
「喜んで、メイ。
私達、しばらく城に留まることになったわ」
メイは目を丸くした。それから「え? え?」と混乱している。
その様子を見ながら、その気持ちがよく分かるとオリヴィアは思った。
心配性のメイの手前、取り乱すわけにはいかないとオリヴィアは冷静さを装っているものの、本心では驚きと困惑を隠せないでいるからだ。
「ど、どうしてなのです? お嬢様は、今日はお見合いにいらしただけなのに……」
「そうね……殿下に気に入られてしまったとでも言っておきましょうか」
メイはまた目を見開いた。
メイには真実を告げても良かったかもしれないが、メイはとんでもなく心配性だ。そして誰よりも、オリヴィア本人よりもオリヴィアのことを自分のことのように感じてくれる。
そんな彼女に、王太子殿下の裏の顔なんて伝えて、余計な心配はかけたくなかったのだ。
しかしそれを微塵も知らないメイは眉をハの字に下げながらオリヴィアに問う。
「お嬢様はいつまで城にいらっしゃるのですか?」
「さあ、どうでしょうね。はっきりと言われてはいないけど……」
城に留まるよう命令したアーノルドの黒い笑顔を思い出してオリヴィアは腹が立った。
あの憎たらしい笑顔は、表の胡散臭い笑顔よりずっと厄介かもしれない。とんだ性悪王太子がいたものだ。
はあ、とひとつ溜め息を吐き出して、けれどこのままでもいられない、と思い直す。
「……言われてはいないけど、一刻も早く領地に戻れるよう努力するわ!」
予定はすっかり変わってしまったけれど、自分がここですべき事はただひとつ。
王太子殿下に嫌われて、領地に戻ることだ。
部屋に戻ってきたオリヴィアの第一声はそれだった。
何があったのかと心配そうな表情を浮かべるメイに、オリヴィアはひとつ溜め息を吐き出した。
「喜んで、メイ。
私達、しばらく城に留まることになったわ」
メイは目を丸くした。それから「え? え?」と混乱している。
その様子を見ながら、その気持ちがよく分かるとオリヴィアは思った。
心配性のメイの手前、取り乱すわけにはいかないとオリヴィアは冷静さを装っているものの、本心では驚きと困惑を隠せないでいるからだ。
「ど、どうしてなのです? お嬢様は、今日はお見合いにいらしただけなのに……」
「そうね……殿下に気に入られてしまったとでも言っておきましょうか」
メイはまた目を見開いた。
メイには真実を告げても良かったかもしれないが、メイはとんでもなく心配性だ。そして誰よりも、オリヴィア本人よりもオリヴィアのことを自分のことのように感じてくれる。
そんな彼女に、王太子殿下の裏の顔なんて伝えて、余計な心配はかけたくなかったのだ。
しかしそれを微塵も知らないメイは眉をハの字に下げながらオリヴィアに問う。
「お嬢様はいつまで城にいらっしゃるのですか?」
「さあ、どうでしょうね。はっきりと言われてはいないけど……」
城に留まるよう命令したアーノルドの黒い笑顔を思い出してオリヴィアは腹が立った。
あの憎たらしい笑顔は、表の胡散臭い笑顔よりずっと厄介かもしれない。とんだ性悪王太子がいたものだ。
はあ、とひとつ溜め息を吐き出して、けれどこのままでもいられない、と思い直す。
「……言われてはいないけど、一刻も早く領地に戻れるよう努力するわ!」
予定はすっかり変わってしまったけれど、自分がここですべき事はただひとつ。
王太子殿下に嫌われて、領地に戻ることだ。