王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
領地から見上げる空の色もこんな色だったかしらと思い出そうとするけれど、今はなぜか思い出すことができなかった。恋焦がれて仕方がないのに、昨日まで確かに思い出すことができたはずなのに。
苦しくなって地面を下に向けると、どこまでも続く石畳と来ている平民のスカートが視界に入る。
メイに心配かけて、城下町の路地裏にたどり着いて、伯爵令嬢の立場にある自分が何をしているのだろう、そんなことをふっと思った時だった。
「お嬢さん、こんなところで一人か?」
からみつくようないやらしい声が鼓膜に響いた。
驚いたオリヴィアが後ろを振り返ろうとした瞬間、オリヴィアの口元は塞がれてしまった。
「そいつは危ねえなあ、用心しないとこんな風に襲われちまうぞ」
にやりと汚らしく笑う男から逃れようとするけれど、腰元に手を回されているせいもあって逃げることはできなかった。
「おっと、逃げるなよ。大人しくしていれば痛い目には合わないで済むから」
「それにしても嬢ちゃん、綺麗な顔してんな。こりゃ、高値で売れそうだ」
オリヴィアを取り押されているのは柄の悪い男達だった。
高値、売る。その言葉から、男達が身売り商売をしていることは簡単に想像がついた。
ああ、面倒なことに巻き込まれてしまった。あれだけ賊に遭わないように警戒してきたというのに、どうしてこんな時に限って出会ってしまったのだろう。
今すぐにここから逃げ出さないと本当に売り飛ばされてしまう。身を捩って、体に力を入れて、逃げ出そうとするけれど男の力には敵わない。それが悔しくてたまらない。
「っと、抵抗するんじゃねえよ、馬鹿が」
男はそういうとオリヴィアの口元をふさぐ手に力を入れた。オリヴィアの頭はぐいっと後ろにもっていかれそうになって足元がふらつく。
ああ、本当にダメかもしれない。そんな絶望に似た感情が湧き上がってくる。
せっかく王城から抜け出して自由になれると思ったのに、こんなところで捕まってしまうなんて。
こんなことになるなら大人しく王城にいた方が良かったのだろうか。領民と暮らしたいだなんて願いを持ってはいけなかったのだろうか。
酸素が薄くなっていく身体では、そんな絶望を思うことしかできない。
苦しくなって地面を下に向けると、どこまでも続く石畳と来ている平民のスカートが視界に入る。
メイに心配かけて、城下町の路地裏にたどり着いて、伯爵令嬢の立場にある自分が何をしているのだろう、そんなことをふっと思った時だった。
「お嬢さん、こんなところで一人か?」
からみつくようないやらしい声が鼓膜に響いた。
驚いたオリヴィアが後ろを振り返ろうとした瞬間、オリヴィアの口元は塞がれてしまった。
「そいつは危ねえなあ、用心しないとこんな風に襲われちまうぞ」
にやりと汚らしく笑う男から逃れようとするけれど、腰元に手を回されているせいもあって逃げることはできなかった。
「おっと、逃げるなよ。大人しくしていれば痛い目には合わないで済むから」
「それにしても嬢ちゃん、綺麗な顔してんな。こりゃ、高値で売れそうだ」
オリヴィアを取り押されているのは柄の悪い男達だった。
高値、売る。その言葉から、男達が身売り商売をしていることは簡単に想像がついた。
ああ、面倒なことに巻き込まれてしまった。あれだけ賊に遭わないように警戒してきたというのに、どうしてこんな時に限って出会ってしまったのだろう。
今すぐにここから逃げ出さないと本当に売り飛ばされてしまう。身を捩って、体に力を入れて、逃げ出そうとするけれど男の力には敵わない。それが悔しくてたまらない。
「っと、抵抗するんじゃねえよ、馬鹿が」
男はそういうとオリヴィアの口元をふさぐ手に力を入れた。オリヴィアの頭はぐいっと後ろにもっていかれそうになって足元がふらつく。
ああ、本当にダメかもしれない。そんな絶望に似た感情が湧き上がってくる。
せっかく王城から抜け出して自由になれると思ったのに、こんなところで捕まってしまうなんて。
こんなことになるなら大人しく王城にいた方が良かったのだろうか。領民と暮らしたいだなんて願いを持ってはいけなかったのだろうか。
酸素が薄くなっていく身体では、そんな絶望を思うことしかできない。