王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
言いたい
翌日、城内は大変に混乱していた。

いつも冷静沈着に仕事をこなしている使用人達が、今日は大慌てでせっせと仕事をしている。

ただならぬ王城の雰囲気に、オリヴィア達はゆっくり部屋で休んでいる気にもなれず廊下城内を散歩していたが、やはり落ち着くことはできなかった上、何が起こっているのかも分からないままだった。


「何が起きたのでしょう?」

「さあ?」


この城に何が起こっているのか分からないメイとオリヴィアは顔を見合わせる。

そのとき、ちょうど通りかかったユアンを見つけてつい呼び止めてしまった。


「ユアン様!」

「ああ、オリヴィア様」


眉をひそめていたユアンはオリヴィアを見つけるとふっと深刻な表情を緩めて笑った。

しかし隠しきれない表情の硬さに、やはりオリヴィアは何かあると思わずにはいられなかった。


「……お忙しいのに呼び止めてしまい申し訳ありません」

「いえ、オリヴィア様でしたらいつでも構いませんよ」


頭を下げるオリヴィアにユアンは柔らかく笑う。

やはりユアンはオリヴィアに対していつも優しい。オリヴィアがアーノルドの婚約者であることを考慮してもだ。それが一体どうしてなのか、オリヴィアにはまるで分からなかった。


「何かお手伝いできることはありますか? 例えば掃除とか」

「お気持ちはありがたいのですが、オリヴィア様を手伝わせたりすれば殿下に叱られてしまいますので」

「……そうでございますか」

こんなに使用人達が忙しくしているのに自分には何の仕事もないオリヴィアは心から彼らを手伝いたいと思っていたのだが、その提案はあっさりと断られてしまった。

気落ちするオリヴィアは気になっていたことを思い出す。


「そういえば、みなさん忙しそうにしていらっしゃいますが、今日は何かあるのですか?」

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