王太子殿下の花嫁なんてお断りです!
そんな表面的なことに囚われたりしない。自分の気持ちは自分のものなのだ。

そう意気込んだオリヴィアは決意に満ちた表情でドレスを選ぶ。


「メイ! 手伝ってほしいの!」

「はっ、はいっ!」


突然のオリヴィアの声にメイは驚きを隠せず肩を上下方向させた。

メイに髪を結ってもらうのが終わると、ちょうどその時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

きっと王宮侍女だろう。

そう思ったオリヴィアが扉を開けると、そこにいたのは王宮侍女ではなかった。


「あっ、アーノルド様!?」


思ってもいなかった人物に、オリヴィアは目を見開く。

アーノルドは自らの形のいい薄い唇に人差し指を当て静かにするようオリヴィアに告げる。


「ど、どうしてアーノルド様がここに?」

「本当は侍女に呼びに行かせようと思っていたが、少し時間ができたからな。直接迎えに行こうと思っていたが……」


そこでアーノルドはオリヴィアの服装に気がついた。

僅かばかり目を見開いて、それから微笑む。


「それは、俺が選んだものだな」


オリヴィアの身に纏う淡い空色のドレスは、胸元に煌めく宝石が散りばめられており、胸元から腹部にかけて細かな花の模様が刺繍されているなど、とても緻密なものだった。

さらに腰の切り返しからは流れるように滑らかで光沢のある生地が惜しげもなく使われていて、優美なドレープが特徴だ。

確かにとてもよいドレスで、決して派手過ぎるわけでないけれど目を惹くような美しい仕上がりをオリヴィア自身も悪くはないものだとは思っていた。

けれどこんなにもよいドレスを選んだのがアーノルドだと思うと、少しむかついてしまう気持ちもある。

なんだか複雑な気持ちになりながら、オリヴィアは「ありがとうございます」と頭を下げる。


「素っ気がないな、お前は」
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