花鳥風月
私はこの逸話をかなり気に入っている。
普通に言うと甘いだけで終わってしまう言葉が、風流な言葉に変えられることでミステリアスな雰囲気で甘さを抑えるという何とも洒落た言葉になってしまうのだ。
だから、いつかこの言葉を言われたかった。
彼がそれを知っているだけで私はもう十分だ。
「すごくすごく、月が綺麗。」
何度も繰り返して言ってみる。
届いて欲しい。
『愛しています』なんて、恥ずかしくて言えない。
だから、こんな遠回しな言葉でも、伝えたいし、伝わって欲しい。
「ありがとう」
……伝わっている。
そう言われた後、キスを落とされた。
「俺の気持ち。」
「知ってる。」
少し意地悪してみたくなった。