花鳥風月
月
彼の隣で月を見て、「月が綺麗ですね」なんて言って笑いあっていられる今は、なんて幸せなんだろう。
いつの間にか雲がすっかり消えた空には、小さく星が瞬いている。
こんな日が来るなんて、誰が予想しただろう。
彼に想われたくて苦しんでいたあの日も、彼と喧嘩をしたあの日も、彼の気持ちが分からなかったあの日も、こんなことは予想出来なかった。
それでも愛して、憎んで、私達は同じ月を眺めていた。
それだけは変わらない。
隣にいる彼に、心の中で語りかける。
……ねえ。私達、どんな時も月を眺めていたよね。
喧嘩をした時も、アイスクリームを食べている時も、会話をしている時も、笑いあっている時も。
泣いている時も。
だから。
これだけは忘れないでいてほしい。