一途な彼にとろとろに愛育されてます
その夜は、ふかふかなベッドに入ると気づいたら眠っていて、翌朝早くに檜山とともに都内へ戻った。
それから慌ただしく仕事へ向かい、日常へ戻ったのだった。
それから数日後、突然その人はホテルのフロントへ現れた。
「あ、いたいた。長嶺さん」
静かな平日昼間の時間帯に、カウンター越しに手を振るのは愛菜さんだ。
ニットのワンピースにストールを羽織ったシンプルな格好だけれど、そのスタイルのよさと華やかなオーラが目立っている。
「ま、愛菜さん?どうして……」
「匠の同僚って言ってたから、ここに来たら会えるかなって」
カウンターから出てロビーへ案内する私に、彼女はふふとかわいらしく笑うとさっそく話題を切り出す。
「この前は大丈夫だった?ごめんなさいね、ワインかけちゃったのうちの会社の者で。これお詫びに」
そう言って愛菜さんが差し出すのは、高級洋菓子店のロゴが入った紙袋。
それに対し私は慌てて首を横に振る。
「そんな、こちらの不注意ですし……いただけません」
「いいの。それに、私もちょっと意地悪しすぎちゃったから」
意地悪?
その言葉の意味が一瞬わからなかったけれど、すぐ察してハッとした。