一途な彼にとろとろに愛育されてます
迂闊に一歩を踏み込まないように、『ミネコ』なんてあだ名で呼ぶようにしたりして。
けど、亜子が笑ったり泣いたりするたびに愛しくて、自制は効かなくなっていった。
さまざまな誤解も解け、ようやく恋人になれた。
けどそれでも亜子は迂闊だから。
明らかに狙ってるだろう男の前でも隙を見せるたびにこちらはヒヤヒヤさせられっぱなしだ。
俺としてはそろそろ付き合ってることも公言したい。
けど女同士の間ではいろいろあるようで、『まだ黙っていたい』というのが亜子の希望だった。
女っていうのは面倒だな……。
杏璃さんと別れ秘書室を出た俺は、従業員への伝言をふと思い出し、休憩前に伝えておこう、とホテルの廊下を歩いていた。
すると視線の先、客室フロアの廊下の端に亜子の姿が見えた。
あんなところにいたのか。せっかくだ、杏璃さんが来ていることを伝えてやろう。
そう思い近づいていくと、亜子とともにいるのはスーツ姿の男。
社員ではないことから客だろうと判断した。
その男が亜子の腕をしっかりと掴んでいるのが目に入り、自然と眉間にシワが寄る。