一途な彼にとろとろに愛育されてます


黒く長い髪を耳にかけながら、瑠璃は口を開く。



「そもそも一緒に暮らすってことは向こうもミネコに好意はあるんだろうし、さっさと付き合っちゃえばいいのに」

「だってさ……好意は好意でも、異性としての好意とは限らないじゃん」



昼食のサンドイッチをかじりながらつぶやくのは、檜山に気持ちを伝えられない理由のひとつだ。



気持ちを伝えて、上手くいけばもちろん幸せ。

けど、そうじゃなかったら。私と檜山はただの同居人という関係にすら戻れなくなる。

今以上に遠くなってしまう関係が、怖い。



「……ま、それもそうか。女として見られてるなら、3年一緒に暮らして進展なし、なんてないもんねぇ」



うっ……。

確かに。恋愛漫画やドラマでは、ハプニングから同居した男女がほどなくして付き合うのはお決まりの展開だ。

けど、付き合うどころか、キスもないし押し倒されることもない。

それぞれのペースで生活をして、夜だけ一緒にごはんを食べて、飲んで……どちらかといえば家族のような感覚に近いかもしれない。


それを思うと尚更、異性としての進展はない気がしてきた……。


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