一途な彼にとろとろに愛育されてます
『……長嶺?』
『檜山くん……あっ、いやごめん!見苦しいものを……』
泣いてる姿を見られたのが恥ずかしくて、涙をぬぐいながら必死に笑みを繕った。
けれど檜山はそんな私を見ると、無言でその場を去って行った。
行っちゃった。でもそうだよね、泣いてる人と一緒にいるとか気まずいよね。
めそめそ泣く女とか嫌いそうだし。
そんなことを考えながらまた俯いていると、突然頬にひんやりとしたものが当てられた。
『ひゃっ』
おどろき顔を上げると、そこには缶コーヒーを二本手にした檜山が立っていた。
『……飲めば』
『え……あ、ありがとう』
さっきいなくなったのは、これをわざわざ買いに……?
缶を受け取りながら驚いていると、檜山は黙って隣に腰をおろした。
『あと、別に見苦しくなんてないから。落ち込むこともミスすることも、誰だってあるし』
顔を背けたまま、笑顔もなく伝えられた言葉。だけど彼なりのせいいっぱいのフォローなのだろうと察することができた。
よく分からない人。だけど、優しい人なんだろうってことは分かった。
思えばあの時から、心は彼に惹かれ始めていたのかもしれない。