一途な彼にとろとろに愛育されてます



「長嶺ちゃーん、あがりの時間だよ。あがろー」

「あっ、はい」



先輩である女性社員に声をかけられ、手元の時計を確認すると、今が18時すぎだと気付いた。

今日は朝からの勤務だった私と先輩は、あがりの時間だ。



「じゃあ、お先に失礼します。引き継ぎ事項メモしてあるのでお願いします」



遅番の男性スタッフへそう小さく礼をしてフロントを出ると、私は先輩とふたり更衣室へ向かうべくホテル内を歩いた。



赤い絨毯が敷かれた通路を抜け、一番奥にある従業員専用のエレベーターに乗り込む。

お客様からの視線がなくなったそこで、私たちはようやく「はぁ」とひと息つけるのだった。



「今日も疲れたー……足パンパン」

「先輩、お客様の呼び出しでお昼休憩もまともに取れてませんでしたもんね。お疲れ様です」



笑って言う私に、先輩は「だけど」と言葉を続けると、疲れた表情から一転して嬉しそうににやける。


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