一途な彼にとろとろに愛育されてます
「今日はこれから彼氏とごはん行くんだ。しかも銀座でお寿司の予定」
「えー、いいなぁ」
銀座でお寿司なんて羨ましい。
けどそもそも彼氏のいない私は、“彼氏とごはん”ということ自体が羨ましい。
「長嶺ちゃんはこのあとは?」
「なーんにも予定ないので、おとなしく帰ります」
彼氏もいない、友達との予定もない私の予定は家まで一直線。
寄るところといえば近所のスーパーかコンビニくらい。
なんとも悲しい私の返答に、先輩はけらけらと笑う。
そんなふうにふたりで歩いていると、向かいからはふたりの男性が歩いてくるのが見えた。
スーツを着た背の高い男性と、その人に続いて歩く同じくらいの背丈で線の細い男。
そのふたりを見た途端、先輩はパアッと表情を明るくする。
「あっ、立花社長。お疲れ様でーす」
ふたりのうちの前を歩く男性、このホテルのオーナー社長である立花社長に先輩はうきうきで声をかける。
私もそれに続くように会釈をして小声で「お疲れ様です」とつぶやいた。
そんな私たちに、立花社長は色素の薄い瞳をこちらへ向けて足を止める。