一途な彼にとろとろに愛育されてます
「さっきありがとうね、助かった。いやー、さすがにちょっとびっくりしちゃった。男の人に突き飛ばされるとか初めて……」
先ほどの後輩の前同様、へらっと笑ってなんてことないフリを装う。
怖かった、なんて情けない本音が見えてしまわないように。
ところが檜山はそんな私をじっと見たかと思えば、私の手をぎゅっと握った。
「なんでお前はいつもそうやって、平気なフリすんの」
「え?」
「怖かったなら、それでいいだろ。俺の前でだけは隠すなよ」
冷静なその声は、この心の本音を簡単に見透かしてしまう。
なんで、だなんて。
だって自分も怖がっていては、白浜さんを守れなかったから。
平気、大丈夫、そう言い聞かせないとダメになってしまうから。
だから、震えも堪えて、『怖い』の言葉も飲み込んだのに。
その大きな手にぎゅっと手を握られて、どっと安心感がこみ上げると同時に、ポロポロと涙がこぼれた。