一途な彼にとろとろに愛育されてます
それからほどなくして泣き止んだ頃には、檜山のジャケットには涙のシミが大きく出来てしまっていた。
けれど檜山は怒ったりすることはなく、寧ろ優しく笑ってくれた。
……ああいう表情が、また反則だ。
そんなことを考えながら、配膳の仕事を終え帰ろうと従業員用通路を歩いていると、近くの休憩室から声が聞こえた。
「檜山さんどうだった?上目遣いで攻めるって言ってたじゃん」
『檜山』、その名前に反応して部屋を覗くとそこには飲みものを手にしたふたりの女性社員がいる。
そのうちのひとりは、昼間檜山に告白していた女性だ。
檜山の前ではかわいい顔をしていた彼女も、友人らしき相手の前ではにこりともせず不機嫌そうに眉をひそめている。