一途な彼にとろとろに愛育されてます
「お疲れ。もうあがりか?」
「はい。なのでこれから彼氏とデートしてきまーす」
「お、いいな。楽しんでこいよ」
先輩の話に笑う立花社長は、無駄のない小さな輪郭の顔に二重の目、通った鼻筋と全体が整った顔立ちが綺麗だ。
その見た目で、さらに若きオーナー社長という役職。それにしては気取ったところがなく親しげに接してくれる。
そういう話しやすさが、立花社長がこの会社で支持を受ける理由だと思う。
ところが。そんな立花社長の後ろに立つ、黒髪の無愛想な顔と目が合った。
「なによ」
「お前は直帰だろ?気をつけて帰れよ」
「って私にデートの予定がないって勝手に決めつけないでくれる!?」
目が合った途端、開口一番に言われたのはなんとも失礼なひと言だった。
社長の前ということも忘れ強気で言い返す私に、彼は無表情のまま。
そんな私達を見て先輩と立花社長はおかしそうに笑った。
「まぁまぁ、長嶺ちゃん行こ。じゃあ、お先に失礼しまーす」
「あぁ。気をつけてな」
なだめる先輩に背中を押されて、その場を歩き出す。