一途な彼にとろとろに愛育されてます
「それにしても長嶺と顔合わせるの久しぶりだなぁ」
「はい。普段あんまり会えないですもんね」
一階のフロントにいる私に対し、田丸さんは最上階のビュッフェレストランでウェイターとして働いている。
なかなか顔を合わせることはないけれど、会うとなにかと構ってくれるいい先輩だ。
「だから長嶺に会いたくて今日も仕事さっさと切り上げて来たんだよ」
田丸さんはそう言いながら私の肩をぐっと抱く。
……この軽い発言と距離感の近さは、少し苦手だけれど。
「あっ、檜山くんサラダどうぞ〜」
苦笑いでその手を肩からほどいていると、向かいの席からは檜山の名を呼ぶ声が聞こえた。
見るとそこでは、女性社員のひとりが檜山にぴったりと肩を寄せサラダを取り分けている。
それを見て田丸さんは小声で呟く。
「……あいつ分かりやすいくらい檜山のこと狙ってるなぁ」
「そうですね……すごい勢い」
あの子、飲み会のたびに檜山にアピールがすごいんだよね。
今日は一段と気合が入っているのか、ざっくりと開いたトップスから大きな胸の谷間が見えている。
檜山はなにも言わず黙ってビールを飲んでいるけれど……さすがの檜山もあれには弱いかもしれない。
見比べるように自分の胸元を見るけれど、悲しいほどに平たい。