一途な彼にとろとろに愛育されてます



すると、ひとりの男性社員がスマートフォン片手に話題を切り出す。



「そういえばうちの娘が2歳になってさ、見て見て」

「うわ、親バカだ。でもかわいい」



画面に表示された、ふたつ結びの髪型のかわいらしい女の子。公園で遊んでいるその子はなんとも楽しそうに笑っている。



「結婚はいいぞー?毎日家にかわいい嫁さんと娘……あいつらのためなら俺は一生頑張れるね!」



早くに結婚をした彼は、にやけた顔で誇らしげに語ると、さらに他の画像も、とフォルダの中の写真を見せる。

そんな中、私の隣で同じくスマートフォンを覗き込んでいた田丸さんが、檜山に視線を向けた。



「檜山とか俺らよりそれなりに収入とかもあるだろ?そろそろ結婚とか考えねーの?つーか彼女いるの?」



檜山に対し投げかけられる結婚の話題に、どうしてかこちらがドキリとしてしまう。

こ、これは檜山の恋愛や結婚事情について聞けるチャンス?

そうちょっと期待していると、



「えー、檜山くん結婚しちゃやだぁ〜」



女の子はそう言って檜山の腕にぎゅっと抱きついた。


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