一途な彼にとろとろに愛育されてます



「長嶺さん」



檜山が出張に出て四日目の夜。

そろそろ仕事をあがろうと書類を抱え建物内を歩いていると、後ろから追いかけてきた同じフロント担当の先輩から声をかけられた。



「はい?どうかしました?」

「宿泊のお客様から19時で予約しておいたルームサービスが来ないって連絡あったよ。気をつけて」

「えっ!?す、すみません!」



それはいつもならしないようなミス。仕事に集中できていない証拠だ。

慌てて頭を下げる私に、先輩は励ますように肩を叩いて戻っていく。



ありえない……そんな新人みたいなミスするなんて。しかもお客様にも先輩にも迷惑かけて。

どんなに気分が下がっても仕事はきちんとしなくちゃいけないのに。



「……はぁ」



そんな自分にがっかりし、ため息をつきがっくりと肩を落とすと廊下を歩き出した。



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