一途な彼にとろとろに愛育されてます
「……寂しいなぁ」
早く、会いたい。
心からそう思うと同時に、ふと気づく。
このまま同居人でいる限り、いつか彼との生活にも終わりがくること。
それは、檜山がルームシェアを終わりにしたいと思った時か。それとも、彼に恋人ができた時か。
その時、私は笑って頷けるのかな。
彼が誰かと暮らす日々を想像しながら、自業自得だと納得して、ひとりこうして暮らしていけるのかな。
そんなこと、考えただけで胸が痛い。
苦しさを堪えるように、ソファに置いてあったクッションに顔をうずめた。その時だった。
ソファ横に投げ捨てたバッグから、ヴー、とスマートフォンのバイブ音が聞こえる。
繰り返し鳴るその音からそれが着信だと察すると、私はバッグからスマートフォンを取り出した。
誰だろ……瑠璃かな。
瑠璃か職場か実家か、電話をかけてきそうな限られた相手を想像しながら画面を見ると、そこに表示されていたのは『檜山 匠』の名前だった。