宿命~フェイト~
人生を変える転機
4年、チイママとして働いてきた私に突然人生最大の転機が訪れた。
その頃私は毎日通っている所があった。
時には同僚と、時にはお客さんと、ほとんどは一人で…
私には好きな人がいた。
背が高くてがっちりして、腕なんて私の倍はありそうな感じ…顔はタッキーを大人顔にした感じかな?
それに歌が超うまい!
たまに行くバーのマスターの亮。
歳は私の2つ上だった。
前からの知り合いだったけど特に意識した事はなかった。
あの日までは…
ある夜(夜といっても仕事終わった後だから真夜中の2時位)お店の同僚と飲みに行った。店の中では一番気があい、いつもコンビをくんでいるはるなと一緒だった。
その日のマスターはなんとなくいつもと違う。何故か気になって仕方ない。
はるなと楽しそうに話しているのを見て、なんとなく面白くなかった。
午前5時。最後にラストソングをマスターが歌いだした。
私のすきな歌。
真っ暗な中で唄っているマスターをカラオケのモニターの光だけが照らしていて…
〝ドッキーン〟
その横顔にやられたー!
その顔はなんとなく悲しそうで、辛そうで、唄っているバラードと重なってしまった。
落ちました!恋に!
そうと解ったら行動あるのみ!
さっそく次の日から猛アピールが始まった。
まずはいいお客さんにならなければ!
そこは同業者。心得ている。
仕事柄駆け引きは大得意!
まずは一週間毎日仕事帰りに通った。
私は焼酎の梅割りにはまっていた。
毎日ボトル1本飲んで、従業員の男の子にも勿論大盤振る舞い。
そしてちょうど一週間目の日。
帰りにビルの前まで送ってくれたマスターに、
「暇なとき電話ちょうだい!」
と言って携帯番号とアドレスを書いたメモを渡した。
それから4日が過ぎた夜。
「いらっしゃいませー」
女の子の声で入り口をみた私は
「いらっ・・・!」
固まった。
マスターだった。
あの日から私はマスターの店
〝BAR・R〟には行っていなかった。
勿論〝作戦〟だった。
(ふふふ。やったー!はまったー!)ニヤニヤしないよう気を付けて、マスターを入り口まで出迎えに行った。
席に案内する間もスーツをビシッと着て、ヘアスタイルもジェルでバッチリ決めて颯爽と歩くマスターを他のお客さんも女の子達も目で追っていた。
私の彼氏でもないのに気分が良かった。
どうみてもホストって感じだったが…
その時私は中身じゃなく、見た目だけで惚れていたんだ。ただの面食い…
そんなんで幸せになれる訳がない。
そのことは後で思い知らされる。
最初は照れと緊張で話をする自信がなかったので、何度か会っているはるなをつけた。
普段はおとなしいらしく、あまり話が弾んでいない。
他の席から見ていた私は覚悟を決めてマスターの席についた。
「仕事があるから長居は出来ないけど、お店に顔出さなきゃって前から思ってたんだ!
しばらく来なかったから樹理ちゃんがいなかったらどうしようってドキドキしちゃったよ。
ってたった3日か」
苦笑いするマスターの笑顔。可愛くて、嬉しかった。
30分程はるなと3人で話をしてマスターは店に戻って行った。
エレベーターまで送った私に、
「今日、帰り待ってるね!終わったら電話ちょうだい!」って。
やったー!携帯番号ゲット!!心の中でガッツポーズ
よく考えたら水商売。携帯番号なんて誰にでも教えてるのに…
そんなこと関係なく、恋してるっ!って感じかな?ウキウキしてしまっていた。
営業?恋愛?駆け引きと探り合いのスタート。
そんな恋も嫌いじゃない。余裕を持って楽しもうと思っていた。
その時は……
それから毎日店が終わってメールを見ると、マスターからメールが来ていた。
(今日は暇だよー終わったら連絡ちょうだい!)
「今終わったから行くね」
(今日は何時ごろ終わりそう?)
「1時であがれそうだよ!はるなと行くね!」
(今日も待ってるよ!)
「お客さんと一件付き合ってから行くね!」
毎日だった。
しばらくするともしかして私はただのかもか?と悩んだりした。
だけど店に行って話して、優しくされて、時には焼きもちやいたりしてくれて、楽しくて嬉しくて、亮が格好よすぎて忘れてしまう。
それに最近ママに彼氏が出来て、私はストレスが溜り、やる気も薄れてきていた。
ママは店をサボりがちになり、出てきても彼氏にびっちりついていて、全く仕事にならない。
最近では私に店を任せて引退したいなんて言っている。
私はあくまでも参謀。ママになる気はない!
何度も断っていた。
私が尊敬して、ついてきたママはどんどん変わっていってしまった。
経営者から女へ……
毎日亮の店に行き、ラストまでいて帰りは亮が車で送ってくれた。
車の中では手を繋いでくれる。
車を降りる時には、
「おやすみのチューは?」って軽くチュッってする。
たまには亮に肩を抱いてもらったまま運転してもらう。(危ないけど…)
そんな二人っきりの時間は車の中の8分位。
一番幸せな時間だった。ずっと続いて欲しいと思った。
このまま死んじゃってもいいくらい気持ちいい時間だった。
家について、亮の残り香
〝ディオールの
ファーレンハイト〟
私の肩や腕に残ったわずかな香り、クンクンしていると、電話がなる。
「もう着くよ!おやすみ」着いたコール。
たまにまだまだ話がしたくてワガママをいうと、
「いいからもう寝なさい。 じゃあね」って切られてしまう。
そんな時は悲しくて亮の気持ちが解らなくて、亮の事をもっと知りたくて泣いてしまう。
明日からもう行かない!そう決めて泣きながら眠る。
それなのに店が終われば亮に逢いたくて我慢出来なくなる。
「昨日はワガママいってゴメン。疲れてるのに…」
「うん。わかったよ!」
そう言っておでこをコツンとやられるとゴロニャ~ンってなってしまう。
そんな私たちはいったいどんな関係なんだろうか?
お互いの気持ちを確認した事はない。
二人の間にはまだ肉体関係はない……
大人のふりしてかっこつけて聞けずにいた。
〝BAR・R 〟では私は一番のいいお客さんだっただろう。
ある日、亮がいつも来てくれてるお礼に食事をご馳走してくれると誘ってくれた。
めちゃくちゃ喜んだ。
亮には見栄はって
「あ~日曜日?うん。別にいいよ。」
なんてあっさり答えたりしてたけど、内心は飛び上がって喜びたい気持ちで一杯だった。
私は前日から何を着ていくか迷った。
何せいつも仕事帰りに逢うから、スーツかドレス姿しか見せたことない。
初の普段着に気合いが入った。
勿論亮の普段着も楽しみ!
絶対ジーンズだろうと思うけど。
当日、家まで亮が迎えに来てくれた。白のセダン。
サーファーの亮には他にも車があるらしい?
私は乗せて貰った事はない。
やっぱりジーンズだった。大正解!
店と違って髪もおろしてて可愛かった。
コジャレた居酒屋に行き、カウンターに二人で並んで座った。
升酒で乾杯した。
お刺身や天ぷらなど少し口にいれるのがやっとだった。
その分お酒の量が増える。
そう。今夜私は告白してはっきりさせる覚悟だった。
飲み慣れない日本酒でほろ酔いになった私は覚悟を決めた。
「亮は彼女いるの?」
「うん」
少し間を置いて前を向いたまま亮は答えた。
亮も今日、その話になることを感じていたのだろう。
あまりにあっさりと答えたので私は少し固まってしまった。
そんな……
電話やメールの返事がなかなか来ない時が何度かあった。
昼間は必ずといっていいほどだった。薄々はそうじゃないかと思い始めていたけど、やっぱりショックだった。
「下手くそだねー
そんなこと言っちゃって私が店に行かなくなってもいいのー?」
私の精一杯の強がり。
暫らくの沈黙…
「それならそれで仕方ないよ。俺は樹理には嘘つきたくない。」
真っ直ぐ私の目を見て、亮は言った。
私はもう何も考えられなかった。
お酒をおかわりして、一気に飲み干して言った。
「じゃあ 私を二番目の彼女にしてくれる?」
亮はさほど驚いた様子もなく
「いいよ!面倒な事言わないなら」
と言った。
なんて男でしょう。そしてなんてバカな女でしょう。
言葉の意味はすぐに理解出来た。
全てのワガママは許されない。都合のいい女になれという事。
私はそれでも亮のそばに少しでも長くいたかった。
彼の腕に抱かれたかった。
バカな女だけど…
「じゃあ今日から私は亮の彼女2号ね!」笑って乾杯した。
その頃私は毎日通っている所があった。
時には同僚と、時にはお客さんと、ほとんどは一人で…
私には好きな人がいた。
背が高くてがっちりして、腕なんて私の倍はありそうな感じ…顔はタッキーを大人顔にした感じかな?
それに歌が超うまい!
たまに行くバーのマスターの亮。
歳は私の2つ上だった。
前からの知り合いだったけど特に意識した事はなかった。
あの日までは…
ある夜(夜といっても仕事終わった後だから真夜中の2時位)お店の同僚と飲みに行った。店の中では一番気があい、いつもコンビをくんでいるはるなと一緒だった。
その日のマスターはなんとなくいつもと違う。何故か気になって仕方ない。
はるなと楽しそうに話しているのを見て、なんとなく面白くなかった。
午前5時。最後にラストソングをマスターが歌いだした。
私のすきな歌。
真っ暗な中で唄っているマスターをカラオケのモニターの光だけが照らしていて…
〝ドッキーン〟
その横顔にやられたー!
その顔はなんとなく悲しそうで、辛そうで、唄っているバラードと重なってしまった。
落ちました!恋に!
そうと解ったら行動あるのみ!
さっそく次の日から猛アピールが始まった。
まずはいいお客さんにならなければ!
そこは同業者。心得ている。
仕事柄駆け引きは大得意!
まずは一週間毎日仕事帰りに通った。
私は焼酎の梅割りにはまっていた。
毎日ボトル1本飲んで、従業員の男の子にも勿論大盤振る舞い。
そしてちょうど一週間目の日。
帰りにビルの前まで送ってくれたマスターに、
「暇なとき電話ちょうだい!」
と言って携帯番号とアドレスを書いたメモを渡した。
それから4日が過ぎた夜。
「いらっしゃいませー」
女の子の声で入り口をみた私は
「いらっ・・・!」
固まった。
マスターだった。
あの日から私はマスターの店
〝BAR・R〟には行っていなかった。
勿論〝作戦〟だった。
(ふふふ。やったー!はまったー!)ニヤニヤしないよう気を付けて、マスターを入り口まで出迎えに行った。
席に案内する間もスーツをビシッと着て、ヘアスタイルもジェルでバッチリ決めて颯爽と歩くマスターを他のお客さんも女の子達も目で追っていた。
私の彼氏でもないのに気分が良かった。
どうみてもホストって感じだったが…
その時私は中身じゃなく、見た目だけで惚れていたんだ。ただの面食い…
そんなんで幸せになれる訳がない。
そのことは後で思い知らされる。
最初は照れと緊張で話をする自信がなかったので、何度か会っているはるなをつけた。
普段はおとなしいらしく、あまり話が弾んでいない。
他の席から見ていた私は覚悟を決めてマスターの席についた。
「仕事があるから長居は出来ないけど、お店に顔出さなきゃって前から思ってたんだ!
しばらく来なかったから樹理ちゃんがいなかったらどうしようってドキドキしちゃったよ。
ってたった3日か」
苦笑いするマスターの笑顔。可愛くて、嬉しかった。
30分程はるなと3人で話をしてマスターは店に戻って行った。
エレベーターまで送った私に、
「今日、帰り待ってるね!終わったら電話ちょうだい!」って。
やったー!携帯番号ゲット!!心の中でガッツポーズ
よく考えたら水商売。携帯番号なんて誰にでも教えてるのに…
そんなこと関係なく、恋してるっ!って感じかな?ウキウキしてしまっていた。
営業?恋愛?駆け引きと探り合いのスタート。
そんな恋も嫌いじゃない。余裕を持って楽しもうと思っていた。
その時は……
それから毎日店が終わってメールを見ると、マスターからメールが来ていた。
(今日は暇だよー終わったら連絡ちょうだい!)
「今終わったから行くね」
(今日は何時ごろ終わりそう?)
「1時であがれそうだよ!はるなと行くね!」
(今日も待ってるよ!)
「お客さんと一件付き合ってから行くね!」
毎日だった。
しばらくするともしかして私はただのかもか?と悩んだりした。
だけど店に行って話して、優しくされて、時には焼きもちやいたりしてくれて、楽しくて嬉しくて、亮が格好よすぎて忘れてしまう。
それに最近ママに彼氏が出来て、私はストレスが溜り、やる気も薄れてきていた。
ママは店をサボりがちになり、出てきても彼氏にびっちりついていて、全く仕事にならない。
最近では私に店を任せて引退したいなんて言っている。
私はあくまでも参謀。ママになる気はない!
何度も断っていた。
私が尊敬して、ついてきたママはどんどん変わっていってしまった。
経営者から女へ……
毎日亮の店に行き、ラストまでいて帰りは亮が車で送ってくれた。
車の中では手を繋いでくれる。
車を降りる時には、
「おやすみのチューは?」って軽くチュッってする。
たまには亮に肩を抱いてもらったまま運転してもらう。(危ないけど…)
そんな二人っきりの時間は車の中の8分位。
一番幸せな時間だった。ずっと続いて欲しいと思った。
このまま死んじゃってもいいくらい気持ちいい時間だった。
家について、亮の残り香
〝ディオールの
ファーレンハイト〟
私の肩や腕に残ったわずかな香り、クンクンしていると、電話がなる。
「もう着くよ!おやすみ」着いたコール。
たまにまだまだ話がしたくてワガママをいうと、
「いいからもう寝なさい。 じゃあね」って切られてしまう。
そんな時は悲しくて亮の気持ちが解らなくて、亮の事をもっと知りたくて泣いてしまう。
明日からもう行かない!そう決めて泣きながら眠る。
それなのに店が終われば亮に逢いたくて我慢出来なくなる。
「昨日はワガママいってゴメン。疲れてるのに…」
「うん。わかったよ!」
そう言っておでこをコツンとやられるとゴロニャ~ンってなってしまう。
そんな私たちはいったいどんな関係なんだろうか?
お互いの気持ちを確認した事はない。
二人の間にはまだ肉体関係はない……
大人のふりしてかっこつけて聞けずにいた。
〝BAR・R 〟では私は一番のいいお客さんだっただろう。
ある日、亮がいつも来てくれてるお礼に食事をご馳走してくれると誘ってくれた。
めちゃくちゃ喜んだ。
亮には見栄はって
「あ~日曜日?うん。別にいいよ。」
なんてあっさり答えたりしてたけど、内心は飛び上がって喜びたい気持ちで一杯だった。
私は前日から何を着ていくか迷った。
何せいつも仕事帰りに逢うから、スーツかドレス姿しか見せたことない。
初の普段着に気合いが入った。
勿論亮の普段着も楽しみ!
絶対ジーンズだろうと思うけど。
当日、家まで亮が迎えに来てくれた。白のセダン。
サーファーの亮には他にも車があるらしい?
私は乗せて貰った事はない。
やっぱりジーンズだった。大正解!
店と違って髪もおろしてて可愛かった。
コジャレた居酒屋に行き、カウンターに二人で並んで座った。
升酒で乾杯した。
お刺身や天ぷらなど少し口にいれるのがやっとだった。
その分お酒の量が増える。
そう。今夜私は告白してはっきりさせる覚悟だった。
飲み慣れない日本酒でほろ酔いになった私は覚悟を決めた。
「亮は彼女いるの?」
「うん」
少し間を置いて前を向いたまま亮は答えた。
亮も今日、その話になることを感じていたのだろう。
あまりにあっさりと答えたので私は少し固まってしまった。
そんな……
電話やメールの返事がなかなか来ない時が何度かあった。
昼間は必ずといっていいほどだった。薄々はそうじゃないかと思い始めていたけど、やっぱりショックだった。
「下手くそだねー
そんなこと言っちゃって私が店に行かなくなってもいいのー?」
私の精一杯の強がり。
暫らくの沈黙…
「それならそれで仕方ないよ。俺は樹理には嘘つきたくない。」
真っ直ぐ私の目を見て、亮は言った。
私はもう何も考えられなかった。
お酒をおかわりして、一気に飲み干して言った。
「じゃあ 私を二番目の彼女にしてくれる?」
亮はさほど驚いた様子もなく
「いいよ!面倒な事言わないなら」
と言った。
なんて男でしょう。そしてなんてバカな女でしょう。
言葉の意味はすぐに理解出来た。
全てのワガママは許されない。都合のいい女になれという事。
私はそれでも亮のそばに少しでも長くいたかった。
彼の腕に抱かれたかった。
バカな女だけど…
「じゃあ今日から私は亮の彼女2号ね!」笑って乾杯した。