【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
幻芳珠
その日は、普通の日だった。
何気ない、後宮の日常にはよくある光景。
「……騒がしい、ですね?」
日課になりつつある、栄貴妃の用意してくれた部屋で玉林さん達を見ていると、外が騒がしいことに気づいて。
「どうなさったのですか?」
翠蓮が外に出て、近くにいた人に声をかける。
すると、
「表貴人が儚くなられたのよ。原因はまだわかっていらっしゃらないのだけど、栄貴妃様が宮正司に疑われているの!」
と、教えてくれた。
宮正司というのは、犯罪を取り締まる……まぁ、簡単に言うのなら、取調べを行い、犯人を探し出し、その後の処遇などを皇帝陛下と話し合う人々が集まる機関。
基本的、女官で構成されており、そこの長を宮正と呼ぶ。
「どうして、栄貴妃様が?貴人のお方となんて、全くなんの関わりもないように思われますが」
「そうなんだけど……ほら、玉林達が……」
「え?」
「表貴人、玉林達と同じような感じだったんだって」
「同じ、とは?」
二人は解毒に苦しんでいるだけで、死んではいない。
身体にも傷が残らないよう、気をつかっているが……傷自体表れていないので、今のところ、ひとつの毒は否定されている。