【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
*
「っ、兄、上……」
苦しげに、呼ばれる。
褥に近づくと、薄らに目を開けた秋遠。
「無理して話すな。今は、休んでおけ」
「ご迷惑をっ、お掛けして……っ」
「そんなことを言うな。お前は、私にとって大切な弟だ。迷惑など、誰が思うものか。ただ……死ぬなよ」
黎祥の言葉を聞いて、弱々しく笑う秋遠。
元より、静かで大人しい秋遠は、荒々しく呼吸を繰り返す。
黎祥は、そっと頭に触れた。
高熱を始めとした、症状。
今回、秋遠を始めとして、人々を侵す毒の効用は、どこかで聞いたことがある気がした。
「―陛下。順薬師を連れて参りました。これから、治療に当たります」
蘭太医とともに現われた、一人の少女。
あどけなさを残したその容貌は美しいが、そばかすが目立つ。
「御機嫌麗しゅう、順翠玉と申します。恐れ多くも、第七公子様の治療に尽力させていただきます」
床に膝をつき、深深と拝礼。
「…っ、…許そう」
「……ありがとうございます」
蘭太医と同じく、澄んだ瞳のその少女。
(そうか―……)
自分が愛した、いや、今でも愛している女。
「高淑太妃様、今すぐ、これをお飲みください」
布で口を覆い、他の者もそれに倣う。
「そして、皆さん、これから―……」
急に現れて、彼女が順翠玉とするならば。
十中八九、絡んでいるのは嵐雪だ。
言った通り、直ぐに治療に取り掛かる翠玉―翠蓮。
「っ、兄、上……」
苦しげに、呼ばれる。
褥に近づくと、薄らに目を開けた秋遠。
「無理して話すな。今は、休んでおけ」
「ご迷惑をっ、お掛けして……っ」
「そんなことを言うな。お前は、私にとって大切な弟だ。迷惑など、誰が思うものか。ただ……死ぬなよ」
黎祥の言葉を聞いて、弱々しく笑う秋遠。
元より、静かで大人しい秋遠は、荒々しく呼吸を繰り返す。
黎祥は、そっと頭に触れた。
高熱を始めとした、症状。
今回、秋遠を始めとして、人々を侵す毒の効用は、どこかで聞いたことがある気がした。
「―陛下。順薬師を連れて参りました。これから、治療に当たります」
蘭太医とともに現われた、一人の少女。
あどけなさを残したその容貌は美しいが、そばかすが目立つ。
「御機嫌麗しゅう、順翠玉と申します。恐れ多くも、第七公子様の治療に尽力させていただきます」
床に膝をつき、深深と拝礼。
「…っ、…許そう」
「……ありがとうございます」
蘭太医と同じく、澄んだ瞳のその少女。
(そうか―……)
自分が愛した、いや、今でも愛している女。
「高淑太妃様、今すぐ、これをお飲みください」
布で口を覆い、他の者もそれに倣う。
「そして、皆さん、これから―……」
急に現れて、彼女が順翠玉とするならば。
十中八九、絡んでいるのは嵐雪だ。
言った通り、直ぐに治療に取り掛かる翠玉―翠蓮。