【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「…………白淑人のことですね」
黒宵国後宮には、四妃(シヒ)―貴妃(キヒ)、淑妃(シュクヒ)、徳妃(トクヒ)、賢妃(ケンヒ)―と呼ばれる四人の妃がおり、その下に、九嬪(キュウヒン)―昭儀(ショウギ)、昭容(ショウヨウ)、昭華(ショウカ)、修儀(シュウギ)、修容(シュウヨウ)、修媛(シュウエン)、充儀(ジュウギ)、充容(ジュウヨウ)、充媛(ジュウエン)―と呼ばれる九人の妃がいる。
この十三名を、妃嬪という。
そして、その下には侍妾と呼ばれる者達がいる。
まず、六侍妾―貴人(キジン)、玉人(ギョクジン)、佳人(カジン)、淑人(シュクジン)、良人(リョウジン)、楚人(ソジン)―は、黒宵国後宮において、各階級、六名ずつと定められている。
そして、次に五職(ゴショク)―英姫(エイキ)、弘姫(コウキ)、承姫(ショウキ)、賛姫(サンキ)、令姫(レイキ)と階級があり、五職は各十名と定められている。
ここまでが、妃嬪侍妾と呼ばれる位である。
つまり、黎祥の正式に定められた妻という訳だ。
正妻であるとされるのは、皇后だが。
今のところ、一番位の高い栄貴妃が、黎祥の正妻。
表貴人が身罷って、まもなく。
再び、三人の侍妾が死す。
二人の侍妾を殺したと思われる女は、白淑人。
家の身分は勿論、高くなく、大人しい女性だった。
それなのにも関わらず、急に錯乱して……二人の侍妾を刺し殺した後、自分の胸を貫き、死んだ。
帯刀が禁止の後宮において、外からの手引きのものがいるのだろうと、宮正司達は考えている。