【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「この子を授かったのは、私の、願いだったのです……。
皇子で無くていいから、陛下の御子が欲しくて、欲しくて―……お願いしたら、『お前が私に頼み事をするとは』と、皇帝陛下の表情で驚かれたのですよ。
そして、『俺で良ければ』と、笑顔で恩幸を捧げて下さった……。秋遠の名前をつけてくれたのは、皇帝陛下なのですわ。この子は、先々帝陛下に似ている……。
皇子が生まれたことで、先々帝陛下にとっても色んな苦労もおありでしたでしょう。
自分の子は、皇女が良いと仰っていたこと、私、存じ上げていましたの。
妃としての役目は果たしましたが、私は彼を愛していた……。せめて、彼の願いに添いたかったのに……生まれてきたのは、皇子で。
謝ると、『皇子の方が、後宮では有利だぞ』と笑われた後、『苦労をかけるが、守ってやってくれ』と……御自身が、業波帝(ギョウハテイ)のことで苦労したから。
優しく、労いの言葉を掛けてくださった。
この子に、名前を与えてくださった。愛情を、下さったんです……大切に育てた、大切な、大切な、先々帝陛下の忘れ形見なのです……どうか、翠玉様……お助け下さい……この命、捧げても構いません。お願いします、どうか、どうか―……」
手を握られる。