【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



心から、願われる。


翠蓮の手の甲は、彼女の涙に濡れていく。


最愛の人を、守りたい。


ただ、その一心で……ここまで、生きてきたのか。


彼を守るためだけに、後宮に留まって。


業波帝は、先々帝の父親。


つまり、黎祥のおじいさん。


大変な艶福家で、先々帝、先帝に負けないくらいの子沢山だったらしい。


各地で反乱を起こすのは、いつの時代も業波帝の子供だったと。


その中で、立ち上がったのが、先々帝だったと。


その頃からの付き合いなのだと、宰相様は教えてくれた。


「救います」


翠蓮は、彼女の手の甲に触れて。


「助けますから、泣かないで」


そっと、優しく、触れる。


「他にも患者がおりますので、ここに付きっきりにはなれませんが……必ず、助けます。龍神に、誓いますので」


この国は、龍神に守られているらしい。


だから、この国のものは祈る時、誓う時、龍神に誓う。


「大丈夫」


翠蓮がそう笑うと、高淑太妃も涙目で笑い返してくれた。


< 138 / 960 >

この作品をシェア

pagetop