【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
心から、願われる。
翠蓮の手の甲は、彼女の涙に濡れていく。
最愛の人を、守りたい。
ただ、その一心で……ここまで、生きてきたのか。
彼を守るためだけに、後宮に留まって。
業波帝は、先々帝の父親。
つまり、黎祥のおじいさん。
大変な艶福家で、先々帝、先帝に負けないくらいの子沢山だったらしい。
各地で反乱を起こすのは、いつの時代も業波帝の子供だったと。
その中で、立ち上がったのが、先々帝だったと。
その頃からの付き合いなのだと、宰相様は教えてくれた。
「救います」
翠蓮は、彼女の手の甲に触れて。
「助けますから、泣かないで」
そっと、優しく、触れる。
「他にも患者がおりますので、ここに付きっきりにはなれませんが……必ず、助けます。龍神に、誓いますので」
この国は、龍神に守られているらしい。
だから、この国のものは祈る時、誓う時、龍神に誓う。
「大丈夫」
翠蓮がそう笑うと、高淑太妃も涙目で笑い返してくれた。