【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
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部屋から出ると、


「―やぁ、こんにちは。翠蓮」


と、笑いかけてくる人物が。


サラサラの銀色の長髪。


金色の瞳は、柔らかく歪んで。


「伯怜さん?」


翠蓮が名前を呼ぶと、彼はニコッと笑みを深めて。


「久しぶりだね。この間は助かったよ。ありがとう」


苦しげな雰囲気もなく、明るくそう言ってきた。


「良かったです。傷は治りましたか?」


「うん。正直、あの傷には参ったよ。いつもはあんなことにはならないんだけどね」


軽く笑う彼は、翠蓮に手を差し出してくる。


「?」


「翠蓮、僕、君に決めるよ」


「……はい?」


「いや、もう、こうなることは"必然”だったのかもしれないんだけどね」


「??」


言っている意味がわからなくて、彼を見上げた。


彼はおもむろに翠蓮の頭を撫でると、


「いつも、いつも、君は人のために頑張りすぎる」


と、苦しげに言われた。



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