【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「―ほんに、大馬鹿者じゃ……」
悲しそうに、金色の目が伏せられる。
「ふぁ……そんなことをしても、彼の"本当”の願いは叶えられないのにね……。眠……」
大欠伸しながら、横目で見下ろす。
「「……」」
―白黒双龍、宙を舞う。
黒い衣を纏った子は、呆れたように呟いて。
大きな欠伸をし、白い衣を纏った子はうとうとして。
ひたひたひたと、音がする。
惑う、揺れる、そして、舞う。
「そういや、辞めて良かったの?」
「さあ?」
「代わりに、僕が寝ててもいいけど」
「それは、そなたが寝たいだけじゃろ。儂は疲れた。千年以上、棺にいれるか。じゃから、出たのじゃ。それに、もう……女王の身体を細工してもいかん。女王はこの地に、蘇りなされた」
「んー……じゃあ、どうするのさ」
またまた、大欠伸。
「僕、忙しいのやだよー?」
のんびり屋の白くんは、眠そうに目を擦って。
「封印されし、宮殿が開くの……」
大きな風に吹かれて、黒髪の子の言葉が流れる―……。
「じゃあ、また、蒼龍にあえるわけだ」
「会いたいのかや?」
「うん。僕、蒼龍は好きだからね」
流れる。
時は流れて、動いて、そして、黒宵国に襲い掛かる。
「嫌な空気じゃ……」
白と黒の、衣はためく。
そして、刹那に消える。
―黒宵国に、大きな嵐が訪れる。