【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
改竄された歴史書
「……嵐雪、何をしているんだ」
翠蓮のことについて、嵐雪を責め立ててから、二週間。
あの後、しばらくしてから謝りに来た嵐雪と和解し、言われるがままに食事もとろうと努力しているのだが、やはり、お腹は空かなくて。
執務室に帰って、酒を片手に上奏文を確認していると、執務室の端で、嵐雪が首をかしげながら、唸っていた。
「あ、ご用事ですか?陛下」
「いや……何を作っているのか、と」
傍によると、嵐雪は紙を見ながら、調合している途中で。
「古傷に効く薬だと、翠蓮殿に貰って……作り方を教えてもらったものの、難しいですね。出来ないんですよ」
「……貸してみろ」
嵐雪から道具を受け取り、翠蓮に習った手法を試す。
「…………できたぞ」
「ええ!?」
「……ん。問題ない」
軽く匂いを嗅ぎ、嵐雪に差し出す。
「……ほんっと、なんでも出来るお方ですねぇ」
はぁ、と、ため息。
「?、翠蓮に習ったんだよ。あそこで薬を作るのは、私の役目だった」
まだ、一年も経っていないのに。
こんなにも、遠い日のように感じる。
「……まだ、怒っています?」
翠蓮を無断で後宮に入れたことを知ったとき、思い浮かんだのは、母親の最期。