【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「怒っていても、いなくても、お前はしただろうが。昔から、勝手な真似は得意だったし……済まないな、本当にこの間は。どうしても、翠蓮は母と重なって見えるから」
「お気持ちは、分かります……」
母は、快活な女人だった。
先々帝と共に狩りに出かけたり、運動したりと……馬に乗ることが好きな、そんな、淑やかな雰囲気とは掛け離れた人だった。
そんなあの人が、眠っていた褥。
真っ赤に染まり、滴り落ちる―……。
『フフフッ、これで、あの人は―……』
凶刃を手にしていたその女を、黎祥は怒りのあまり、その場で斬り殺した。
「……ハッ、懐かしいな」
「あれから、もう、五年以上経ちますからね」
「まだ、それくらいなのか?」
生まれて初めて殺した、女。
一発では、彼女は事切れなかった。
『あらぁ、……貴方も、、一、緒に……』
死にかけのくせに、口から血を吐きながらも、黎祥にしがみついてくる女。
『あの人に……っ、ゴホッ、そっくり、、ゴホッ、……だわ』
女が咳き込む度、喉から血が溢れる。
コポコポと嫌な音を立て、刻一刻と、彼女は弱っていく。
それでも、黎祥の怒りは収まらなかった。
『っ、"母さん”……っっ、』
苦しかった。
母を殺したその女が事切れた後も、黎祥は怒りをその女にぶつけた。
ずっと、刺し続けた。
周囲が止めても、止まらなかった。