【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―



そして、先々帝の跡継ぎになりそうな皇子を片っ端から、殺そうとしてきた。


何故か、先帝にも湖烏姫にも目をつけられていたのが、黎祥だったというだけで……まぁ、十中八九、黎祥の母である彩蝶が、一番の愛妃だったからだろうが。


それと、先帝は黎祥を憎むほどに嫌っていたと、先帝のそばにいたものが教えてくれた。


好都合だ。


黎祥もまた、先帝みたいな愚かな王は大嫌いだった。


「先帝陛下と言えば、湖烏姫が唯一、命を狙わなかったそうですね」


「そうだな。……ところで、あの馬鹿愚王を、我らのかつての王って呼ぶべきなのか?」


「そこは……一応、先帝陛下ですし。貴方の兄君ですよ」


「いや……ずっと思っていたのだが、本当に同じ父を持っていたんだよな?」


「性格や考え方が似ぬのは、兄弟でも同じです。全てが似た人間なんて、居ないんですから。そして、そういうのを育てるのも、育った環境が問題。育った環境が違うあなた方が、似ているはずがないでしょう」


「まぁ、そうなんだが」


どうも、引っかかる。


とっくに分かっていたことだが、唯一、湖烏姫に命を狙われなかった先帝。


単純に、既に皇太子だったから……手を出せないのだと思っていたが。


「……なぁ、嵐雪」


「はい?」


作ってやった薬を布に包んでいたところ、嵐雪は顔を上げる。


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