【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「湖烏姫は彩蝶様を弑逆しました。あれくらいのこと、当然のことです」
……嵐雪は心の底から、彩蝶を慕っていたから。
どうしても、憎しみは消えない。
「貴方も何度、殺されかけましたか。毒蛇、蠍、暗殺者……本当、よく生きてましたね」
「あ―……確かになぁ。どうやら、私、悪運は強いみたいだ」
その他の運は、死滅しているけれども。
「そこは威張らないで下さい」
「威張っているつもりは無いが」
―コンコンッ
「―……入れ」
急ぎ気味に、叩かれた執務室の戸。
応えると、一人の術者が血相を変えて。
「陛下……っ」
「どうした、儀式のことで何かあったか」
その術者は、儀式のことを任せている長だった。
「それが―……」
告げられたその一言は、国を揺るがすこととなる。
"初代の御遺体が、どこにもありません―……”
……さぁ、全てを巻き込んだ嵐は、
吉と出るか、凶と出るか。