【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
約束
後宮に翠蓮がやって来て、早くも半年。
国は、元宵節を迎えた。
「じゃあ、行ってくるわ。翠蓮」
「はい、行ってらっしゃいませ」
元宵節の夜は、皇宮の九つの門が開く。
都の灯籠見物に、皇帝を始めとして、皇太后、妃嬪侍妾、大長公主、長公主、親王などが、それぞれ各々の香車(クルマ)に乗って出ていくためだ。
妃には側仕えも必要で、だからこそ、翠蓮も栄貴妃に誘われたが……翠蓮には他にもやりたいことがあるので、うまいことお断りした。
内楽堂の足りない薬を用意したいのだ。
この間は柳皇太后の元に留まってしまい、行けなかったから。
栄貴妃一行を見送り、自室へ戻る。
この自室は、栄貴妃が与えてくれた翠蓮のための部屋。
『必要でしょう?だから、ここを好きに使って』
微笑みながら、用意してくれた部屋は広く、少したじろぐけど……好意は嬉しくて、有難く頂戴した。