【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「えっ、いや、それはっ!!」
惑う、彼女の手を取って。
「貴女が忘れられるべき皇女なら、忘れているふりをしなければならないのなら、誰もが目を背けるはずです。親が憎まれているからと言って、あなた方が影で生きる必要も無いでしょう?こんなところから出て、私の元に来てください。守りますから。……何に代えても」
ね、と、翠蓮は笑いかける。
必要ないのだ。
例え、親が幾千の殺しをしていたとしても。
それで、翠蓮の父が死んでいたとしても。
これは先帝の罪であり、翠蓮の怒りや憎しみは彼女に向かうべきものでは無い。
「……それで、鈴華達は幸せになれますか」
小さく、彼女はつぶやく。
翠蓮は笑みを深めて。
「麟麗様、鈴華様たちだけではありませんよ。貴女も幸せになるのです」
そう言うと、彼女は自分の手元に視線を落として。
「幸せに、だなんて……そんなこと、考えたこともありませんでしたわ。助けても、私は忘れられた死に損ないの皇女です。それなのに……助けて、どうしようというのですか?私はあなたに、何もあげられやしないのに」
麟麗様の真剣な問いに、翠蓮は微笑んで。