【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
(ねぇ、父上―……)
夜を愛撫するように聞こえてくる音色は、元宵節を祝う言祝ぎ。
翠蓮はゆっくりと目を開けて、怯えた目をする少女の頬を撫でる。
「笑って、麟麗様」
どうか、怯えないで。
この世界は思ったよりも楽しい筈だから。
諦めないで。
「貴女に、龍神の加護があらんことを」
翠蓮が微笑みかけると、それに誘発されるように、笑う……ではなく。
麟麗様は涙を流して、翠蓮に抱きついた。
まるで、緊張の糸が解けたかのようだ。
翠蓮はそんな彼女を抱きしめて、背中を撫でる。
―いつかの自分にも、こうしてあげたいと思いながら。