【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「その時は、思いっきり泣けばいいではないですか」
「……」
「泣いて、苦しんで、次の日、泣き腫らした目で皇帝陛下の前に現れれば良いのです。だって、それは、貴女の愛の証でしょう?」
と、言ってくれた。
「愛の、証……」
「違いますか?それに、子がいれば、そんなに寂しいものでもないですよ?」
順家は、全面的に翠蓮を後宮に入れたいと考えているのか。
それが、黎祥の幸せだと信じているのか。
そんなものは、きっとまやかしなのに。
黎祥が、翠蓮なしで生きられないとは思えない。
彼が誰も寵愛していないのは、単に寵愛するのに手頃な女性がいないからだ。
その手ごろな女になるつもりは無いし、なりたくない。
一人になるのは、あの恐怖は、もう十分。
「……私には、無理です。黎祥を、支えることはできません」
孤独を覚悟してまで、己の身を穢す勇気が、翠蓮にはない。
闘うことは構わないけれど、きっと、それらは翠蓮には向いてない。
翠蓮には、人を救うために奔走している道の方が似合っている。