【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ごめんなさい……っ、騙してて」
「フフッ、順大学士にも頭を下げられたわ。でもね、私、そんなことはどうでもいいの」
「え?」
「こんなに重いことを、貴女が黙って、一人で背負っていたことに気づけなかったことの方が心苦しい。気づいてあげられなくて、ごめんなさい」
同じ年の、優しい主。
兄の恋人でありながら、黎祥の妻である人。
翠蓮が守りたいと望む人は、翠蓮の為に頭を下げてくれる。
こんなにも、誇り高いことはあるだろうか。
「やめてください……私は、私……」
「翠蓮。それ以上、自分を責めないの」
手を握られる。
優しく笑って、彼女は。
「何があってもね、慧秀は私を愛してくれるの。だから、私は何も怖くないのよ」
「っっ……」
「陛下も、貴女を責めたりはしないわよ。貴女は陛下の為を思って、行動しているのでしょう?淑黎祥のためだけに生きられないぶん、皇帝陛下の彼のために走り回っているのでしょう?人を救うために、自分の命をかけようとしているのでしょう?」
……本当に、そんな綺麗な理由だろうか。
自分は黎祥を愛していて、
でも、どうにもならないのだから、と、人のせいにしながら、ここに来て。
黎祥の後宮で生き残るために、黎祥を裏切っているのに。
「私は、それだけでとても素晴らしいと思うわよ」
栄貴妃の言うように、自分は綺麗じゃない。
皆が言うように、翠蓮はそんなに特別な人物ではない。