【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「ついてきたいのなら、ついてきてもいいけど……お留守番でも全然いいわよ?怪我してるし」
だいぶ、癒えたものの……それでも、まだ、傷は深い。
塞がった訳では無いから、痛みはあるはず。
「……なら、ついて行く」
それでも、黎祥はついてくるらしい。
黎祥専用となりつつある外套を深く被り、翠蓮が用意した籠を持ってくれる。
パッと見、農家のおじさんなんだけど……なんで、こんなにも格好いいんだろうか。
もう、よもや、さすが美形!と、言わざる得ない翠蓮である。
雰囲気からして、女にモテそうな感じがするのだ。
「ところで……暗殺者さんは、大人しくなったの?」
「最近、外には出ていなかったから、わからん。……でも、大丈夫だ。剣の心得はある」
外套の下に見えた腰には、確かに帯剣されていて。
「心配するな。何があっても、翠蓮のことは守るから」
そう言われて、翠蓮はすぐさま声を上げた。
ときめく所なんだろうが、生憎、薬師として、そんな余裕はない。