【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
命を懸けて
「秋遠様、体調はどうですか?」
―宵影閣にて。
翠蓮がそう尋ねると、
「だいぶ、回復致しました。起き上がれるようになりましたし、今では剣も振るえるようになったんですよ」
嬉しそうに語ってくれる秋遠様は、
「これで、漸く、兄上のお役に立てます」
と、明るい表情で微笑んだ。
「フフッ、良かったですね」
あの苦しみにもがいている時と比べれば、確かに解毒はされたんだろう。
この明るい表情が、何よりの証だ。
吊られて、翠蓮も笑っていると、
「本当に、感謝し尽くせません」
と、高淑太妃に深く、頭を下げられた。
「ちょっ……頭を上げてくださいませ!高淑太妃様!!」
秋遠様の御母堂である高淑太妃様はとても情け深く、優しく、礼に尽くされる方で、秋遠様の……息子の無事を祈り続けた結果、無事、生死の境から生還した秋遠様を見て、ほっとなされたようだ。
「いえ。これぐらい……本当に、約束を守って下さり、本当に……っ」
言葉に詰まった高淑太妃様。
「母上……」
そんな母を見て、秋遠様は
「御心配を、おかけ致しました」
と、高淑太妃様の背中を撫でた。