【完】李寵妃恋譚―この世界、君と共に―
「……事情は、分かった」
―西和殿広間。
「お前も大変だな、黎祥」
早くも到着した隣国の王二人を眺めて、杯を傾ける。
「僕達はゆっくりで大丈夫です。信頼出来る宰相が向こうにはおりますし、我が国は落ち着いてますから」
「御迷惑おかけしてすみません、蒼波王」
「クスクス、そんなに堅苦しくならなくて大丈夫ですよ。君のお父上……龍炯帝(リュウケイテイ)とは長い付き合いでしたし。とてもではありませんが、君の兄上である先帝陛下……晋熙帝(シンキテイ)とは気が合わなくて」
黎祥の父親―龍炯帝と呼ばれる淑祥星は、他国との親交もよく行い、国境を越えた友人の多かった。
それに反して、父親と同じことをすることを拒んだ先帝―晋熙帝、淑勇成は完全に国を閉ざし、他国に喧嘩を売りまくったのだ。
黎祥がその後始末を完全に終えたのが、一年ほど前。
何もせず、遊興に耽っていてくれれば、あそこまで無駄な出費を嵩むことは無かったのに。
「あの人と気が合うと思う方が、間違いですよ」
苦笑いする、蒼波国王の双秀敬(ソウシュウケイ)。
齢、四十半ばの、かつて、黎祥の父に可愛がって貰うという皇太子時代を過ごしたらしい人である。